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相続弁護士コラム 遺産分割

相続における生命保険の取扱い

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1 はじめに

生前の相続対策として、生命保険に加入し、その受取人を配偶者や子どもたちにしている方も多いのではないでしょうか。
例えば、将来的に相続人の間で紛争が生じる可能性があり、そのうちの一人にできる限り多く残したいとの思いで、生命保険に加入されている場合もあるでしょう。
では、生命保険金は、相続の対象とはならないのでしょうか。
本稿では、生命保険金の相続における取扱いについてご説明いたします。

 

2 生命保険は相続財産ではない!?

被相続人が生前に加入していた生命保険で、受取人を相続人のうちの一人に指定していた場合、その生命保険金は相続財産にはならないというのが法律の原則的な考え方です。
生命保険金は、従前の保険契約に基づき、被相続人の死亡という保険事由が発生したことにより、指定されていた受取人が固有に取得した権利であるという理屈です。
そのため、受取人は、他の相続人との遺産分割協議を経ないで、保険金を受け取ることができます。

 

3 相続放棄との関係

そして、生命保険金は相続財産の対象ではないので、相続放棄の対象でもありません。
つまり、被相続人の相続について、相続放棄をした場合であっても、受取人が生命保険金を受け取ることができます。
また、生命保険金を受け取った場合でも、それ以外の相続財産を被相続人の借金額が上回る場合には、相続放棄をすることもできます。

 

4 例外的に相続として考慮される場合

4−1 例外的に相続にあたる場合がある!?

このように、生命保険金は相続財産ではなく、被相続人の財産とは切り離して考えるというのが法律の原則的な考え方です。
もっとも、このような考え方には例外も存在するということに注意が必要です。
その例外というのは、相続人の間で遺産分割協議をする際に、受領した生命保険金の額について、相続財産を受け取ったとみなす場合があるということです。
これは、特別受益における持ち戻しという考え方に関するものです。

4−2 特別受益とは?持戻しとは?

民法903条1項では、共同相続人の中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻や養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなすという規定があります。
具体例で見ますと、父親が1300万円の預金を残して無くなった場合で、その子ども3人で法定相続分に応じて3等分するといったケースで、そのうちの一人が生前に父から500万円を援助してもらっていた場合には、この500万円を相続財産に加えて、合計1800万円を3等分する(生前に500万円を受け取っていた相続人は残り100万円のみを相続する。)ということなります。
この生前に受けた500万円を「特別受益」といい、それを相続財産に加算する取扱いを「持戻し」といいます。

4−3 生命保険が特別受益になる!?

上記の特別受益の持ち戻しの規定は、被相続人から生前に資本の贈与を受けた場合を想定したものですので、被相続人の死亡後に保険会社から支払われる保険金については、文言上これに当たらないことになります。
もっとも最高裁は、次のような理由から、この規定を類推適用して生命保険金が特別受益として持戻しの対象となる場合があると判断しました。

4−4 最高裁第2小法廷・平成16年10月29日決定)

「死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。」

4−5 そのような場合に特別受益に準じて持戻しの対象となるか

このように、最高裁は、保険金受取人と他の相続人との間に到底是認することができないほどの不公平が生じた場合には、例外的に特別受益に準じて持戻しの対象となると判断しました。
では、実際にはどの程度の不公平があれば対象とされるのでしょうか。
この点について、上記最高裁では、「保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべき」としています。
この事例では、遺産分割の対象とされた相続財産が、価格にして約700万円であり、他方で生命保険金は合計で訳570万円だったものの、それぞれがすでに相当の財産を取得しており、純粋な相続財産の額が6000万円近くに上るものでした。この件では、裁判所は、不公平は著しいとは言えないとして、持戻しの対象とはしませんでした。

4−6 持戻しの対象となるかはケースバイケース

これまでの下級審の裁判例では、

①遺産総額が約8423万円に対し、保険金額が約5200万円のケース(遺産総額の61%)、
②遺産総額が約1億円に対し、保険金額が約1億円(遺産総額の100%)

の事案で持戻しの対象になると判断しました。
他方で、

③遺産総額が約7000万円に対し、保険金額が約430万円(遺産総額の6%)

の事案では、持戻しの対象になりませんでした。
最高裁が判断基準として挙げるように、持戻しの対象となるかは、個別具体的事案における判断となります。
もっとも、その後の下級審の裁判例を見ると、遺産総額に対する生命保険金額の割合が重視されているようです。

 

5 さいごに

以上のとおり、生命保険金は、原則として相続の対象とはならないことから、特定の相続人に多く受け取ってもらうための方策として有効なこともあります。
しかし、その額が高額の場合には、後の相続において争いの種にもなりかねません。
生前の相続対策をお考えの際には、この点を考慮した遺言を作成する等の準備が必要となりますので、是非一度、ご相談ください。
また、相続人間の遺産分割において、生命保険金の取扱いについて揉めているという方も、お気軽にご相談ください。
相続問題に精通した大阪バディ法律事務所が、解決に向けて全力でサポートいたします。

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